2021年 05月 28日
タフでなければ生きていけない外伝 グレアマへの道 ③
ブラジル政府の強烈で不思議な通貨政策に翻弄された時代が終わって現在のブラジルの通貨の”レアル” が導入されゴマくらいのちっこいオレの事務所もドル収入で”地獄から天国へ”の時代だった
グレアマ大会の原型を思いついたのは好転した資金繰りを背景にアマゾンのアチコチにでかけていたからだ
オレの事務所の仕事の中心はアマゾンの熱帯魚を輸出することだった
熱帯魚の世界では少しでも珍しい魚が高く売れる アマゾン流域に点在する”熱帯魚の網元”から簡単に手に入る”並モノ”と呼ばれるありふれた魚では利益が出ない 並モノは大量に売らなければ儲からない そんなフツーの魚は資本力のある大手の輸出業者が大量に扱っていてオレの事務所のような新参者で弱小資本では大手に絶対に太刀打ちてできないのだ
なので
”高級熱帯魚の分野で有名になる”
という作戦をオレは立てた
高級熱帯魚とは簡単には手に入らない珍しいか、少ないか 未知かのキレイなサカナのことだ そんな上玉はモチロン簡単には見つからない どこに棲息しているかも大まかにしか特定できない 海外に輸出されたことのない ”幻のXXXX” と呼ばれる熱帯魚が当時のアマゾンにはまだたくさん眠っていた 熱帯魚マニアもファンもイヤ学者も誰も見たことのない新種を見つける可能性もあったのだ
そんなサカナを一発当てるとまさに一瞬で売れてガバっとカネが入ってくる
値段も ”つけ放題 ” に近い
なのでオレの事務所ではアマゾンの全域に情報の網をかけて珍しい熱帯魚を探していた
儲かる未知のサカナ探しはトドのつまりは金鉱堀りが必死で金を探すのと変わらずそれはアマゾン版の ”西部開拓史” の時代だった
現グレアマ理事でブラジルを仕切っているヤマモトをスカウトしたのもこの頃だ マナウス市に二つ目の熱帯魚輸出会社をヤマモトをパートナーとして作った マナウス市はアマゾン本流域では最大の都市でド真ん中にある
だからマナウスに拠点をつくるとアマゾン情報がオレの住んでいたゴイアニアの何倍も入ってくるのだ
このマナウス市とゴイアニア市を起点にいろいろなところに ”金鉱を探し” にでかけた
プルス ネグロ タパジョス シングー トカンチンス アラグアイア トロンベタスなどの大支流はもちろんだがその支流、そのまた支流と奥まで入り込んで探した そのくらい追わないと”金鉱”は見つからない
そんな経験がグレアマを思いついた経験の基礎となっている
金鉱を探すにはアマゾンの民からの情報と案内が不可欠だが、彼らのいい加減な情報に散々振り回されたからだ
例えばーアマゾンの支流の小さな無名の町に ”あやふやな金鉱情報” を頼りに乗り込んだとする
ドイツの熱帯魚マニアから入手したたった一枚しかないうーんと昔に撮影された ”幻の熱帯魚の白黒写真” を持っていく
それをアマゾンの小さな町に乗り込んでその町のハシケのような港にたむろっている漁師にまず見せるところから始まる
ー オッサンさぁ この魚をさがしてるんだけど 見たことある?
オッサンは写真を覗き込みながら
ー おお この魚ね オレは見たことがあるぞ
ー 見た? このサカナだな?
ー この魚だと思うじゃ
ー ホントかよ? よく見てくれ?
ー 知っておるぞ この先におるじゃ
ー えホント? この先?
(一発あてられるのでは!とオレはコーフンする)
ー まぁそう思っとるがーーー
(まぁそう思っとる? うーんなんか怪しい)
ー もう一度写真をよ〜く見てくれ
ー 多分このサカナじゃ
ー そうか
ー 実はナ ワシのマタイトコの旦那がこの川を下ったナントカという支流のに住んどる
その男ならこのサカナをワシよりよく知っトル そこに行ってみて聞いてミィ
”怪しい” と思いながらも ”もしかしたら当たりかも” との欲がコチラにあるからあやしげな情報にどんどん引きずりこまれ結局行ってみることになるのだった
”すぐそこだ”
とオッサンがいうマタイトコのところへ行くのも簡単ではない 100%思っているより遠いのだ
でもこちらはわずかの希望にすがってまず小さな港でボロい漁師船を探して借りる このボロ船を所有しているオッサンがパイロットだ そのオッサンパイロットとガソリン代とレンタル代と”お礼” の交渉をする
つまりカネの話だ
”先払いだ” とか ”イヤ後払いだ”とか、”じゃ半分先払いだ”ーとかゴタゴタ交渉した末に船を借りる、
その後はその町にあるなんでも屋食料品店みたいなところで最低限の食料と水とトイレットペーパーなんかを買いこむ 最後に寝るためのハンモックを買ってようやく出発となる
木造のボロ船でゴンゴンコンとうるさいエンジン音を聞きながらゆっくりと川を上っっていく
やっとこさ上流の村らしきところにつく
そこはブラジルでコミュニュダージと呼ばれるほぼ自給自足の村でカボクロとよばれる
インディオの血が入った浅黒い人たちが住んでいる 電気の無いところもある
その村でオッサンのマタイトコを探しだして写真を見せて話を聞く
するとそのマタイトコも
”そのサカナはおるぞ” というのだ
ー オオ その魚はオルオル すぐ近くにオルよ
ー え そうなの ホントかよ ?
ー オルオル オレはこの辺りで長いあいだ毎日漁をしておる たまに網にかかるぞよ
ー この写真のサカナ?
ー よく似ているがのぅ
ー いまからすぐ行こう!
ー 明日だナ 今日はもう遅いデ
でボロ船にもどりピラニアがうようよいる川で水浴びをして船にハンモックを釣って寝る
ハンモック用の蚊帳をわすれると場所によっては蚊の猛攻を受けて悲惨な一夜を過ごす
ことになる
で、翌日このマタイトコの漁師に網を投げてもらったりしてサカナを探す
結論をいうと、だいたい目指していたサカナはいない
多くの費用と時間をかけ持ち帰り用の機材を満載してアマゾンの奥まで入って三振
気分的には三球三振で試合終了
アマゾンの風景もロクに見ずグッタリして帰ることが実に多かった
なぜ何度も何度も情報に振り回されるのか? それはアマゾンの民はいい加減なことを適当にいっているわけではなくて、写真でみたサカナが彼らには ”オオ これは居る” となるのには理由があった
世界の熱帯魚マニアが期待するのは ”ある種の小さなサカナのうーんと細かい違いの珍しいモノ”
でそれは熱帯魚マニアの特別な世界なのだ
例えば「金魚の世界のランチチュウの、ある種のカテゴリーの、その中の個体から特に珍しい模様に特徴のあるモノ」をアマゾンで探すようなことなのだ 高級熱帯魚とは超ピンポイントの違いを探す世界だからだ
ところがアマゾンの民は写真を見てそれを ”金魚だ” と理解しそれがエサ金であろうがランチュウであろうがオランダシシガシラであろうがそれが金魚なら
”おお それは居る” となるのであった
だかたアマゾンの民はいい加減なことを言う気も悪気もなくて目指す世界がまるで違うのであった
さて こんな経験を何百回もしているうちに少しずつでもアマゾンからはいってくる
情報を取捨選択する術が身についてくる その情報を仰角/俯角/対角から考えてみて、少しずつでも期待値と実現値を近づけるやり方がわかってきた
なにしろオレは事務所の経営に失敗したら ”負け犬” としてスゴスゴとTOKYOに戻ることは避けられない
それはカッコ悪くオレにはどうしても避けたいことだった
だから成功はしなくても ”アマゾンで生き残ってこの地に留まらなければならない”
と思っていた
今振り返ると必死だった思う
で、グレアマだ
こんなアマゾンでの数え切れないくらいの失敗と僅かな成功の経験がグレアマを思いついたキッカケとなり
実行してみよう、と考えるに至ったバックボーンとなっている
しばらくして観光庁の長官のラナの母親とそのチームとゴイアニアのレストランで会うことになった
続く
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by theamazontouch
| 2021-05-28 09:49
| グレアマへの道