2008年 12月 14日
タフでなければ生きていけないー 食いモノをめぐる戦い 完結編ー
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サンパウロに着いた。
ホテルにチェックインし、シャワーを浴びた。
冷蔵庫からビールを取り出し一気に飲んだ。
空き缶を灰皿に椅子に座ってタバコを吸っていると、ヤツから確認の
電話が入った。
「 予定通り着いたな、飛行機が遅れると思っていたがー」
「 あぁ 珍しくまともに飛んだ 」
「 8時に迎えいく、ロビーで待っていてくれ 」
「 OK 」
ヤツとの ”食イモノをめぐる戦い” はすでに始まっている
とオレは考えていた。
ヤツは今はまだ事務所だ。
だから忙しい。
今晩食う食イモノについてまだ考える余裕はない。
ヤツがそれを考えだすのはピックアップのためのクルマに
乗ってからだ。
オレは今考えることができる。
全身がターゲットを絞ったその”食いモノに”に調整される、
胃も腸も肝臓も腎臓もそして脳も。
” カンケーないのは心臓くらいのものだ ”
さてオレは今日何を食うべきなのか決めなくてはないらない。、
タバコをもう一本取り出し、フーッと強く煙を吐き出した。
>
オレはヤツと約束した時間のキッカリ5分前に部屋をでてロビーに降りた。
隣のバーからスーツ姿の男女がバカ笑いをしているのが聞こえる。
” さすがサンパウロだな ”
とオレは思った。
仕事の帰りにスーツ姿でバーでダチと酒を飲む。
それから帰宅する。
オレの住んでいるゴイアニアではそうはいかい。
オトコドモは仕事が終わると一目散に家に帰る。
仕事帰りにバーに寄るなど考えられない。
外で酒を飲むときは、女房づれか、愛人づれでカップルばかりだ。
一度家に帰ってからまた出かけるからこうなるのだ。
” ダサイな、ゴイアニアは ”
とオレは思った。
かなりダサイ。
鬱陶しいオンナと出かけなければ酒も飲めない。
その点 サンパウロはトーキョーと変わらず
ダチはモチロン、それほど親しくもないオンナとでも、飲む機会
はいくらでもある。
家に帰るのはその後だ。
” 都市文化はやはりサンパウロとリオだけかー ”
そんなことを考えながら入口のドア越しに外を見ていると
ヤツの車が入ってきた。
その瞬間オレの全身に ”食いモノアドレナリン” が横溢するのを
ハッキリと意識した。
そしてヤツがドアマンにキーを預けると同時にオレはドアに向かった。
ヤツが回転ドアに入るほんの一瞬前にそこに滑り込んだ。
ガラスの中のオレをヤツは素早く見つけ、ドアに手をかけるのをやめてオレを外で待っている。
「 待ったか? 」
「 そうでもない 」
ヤツはクルマに左から乗り込み、オレは助手席に座った。
無言のままヤツはエンジンをかけ、光り輝くこの南米一の大都市に
クルマを溶け込ませていく。
最初の信号でヤツがやっと口を開いた。
オレは緊張した。
「 ところで今日は 何が食いたい?」
出た! この ”問い” をオレは一か月間待っていた。
”この瞬間のためにオレの今までの人生はあったのではないか! ”
と錯覚をおこしたくらいだ。
横をみると、ヤツは薄笑いを浮かべている。
ヤツの頭の中には
”今日の食いモノの具体的なイメージ”
がいつものように完全に固定されいてるに違いない。
オレはイキナリ答えた。
「 チョーセンヤキニクだ 」
「 エッ 」
「 チョーセンヤキニクッ 」
「 ------ 」
「 うまいロシア料理の店を見つけたんだがーー」
ヤツの声にチカラがない
オレは黙っている。
絶対に余計なことはしゃべってはないらないー
「 ザクースカが最高らしい、 キャビアに黒パンもうまいに決まっている 」
「 ----- 」
オレはやっとヤツに答えてやった、
「 オレは塩で行く、オマエはタレか ?」
ヤツの食いモノオーラがみるみる落ちていくのが
横に静かに座っているオレにはよくわかった。
ヤツは場の主導権を押さえられなかったのだ。
それはオレが押さえていたのだ。
気がつくとクルマはアクリマソンというオリエンタルが多く住む
セクターに向かっている。
” 勝った ”
” オレはヤツとの食いモノの戦いに勝ったのだ ”
しかしオレはヤツが少し可哀そうに思えてきた。、
なぜならヤツの全身は胃を中心にして ”ザクースカ ”に向けて完璧に調整され
ていたのに違いないからだ。
それがオレに予想外に食の主導権を取られ、ヤツの全身は拠り所を失い、いまは
ぶっ壊れたPCのようにカオス化しているのに違いない。
やがてクルマがチョーセンヤキニク屋らしき店の前で停止した。
赤と黒と白のインテリアがガラス越しに見える。
”さすが いい店を知っているな ”
とオレは素直に思った。
店内にはいると韓国人らしいオヤジが妙に媚びた雰囲気で
テーブルにオレとダチを案内する。
無煙ロースターの煙突が銀色に輝いている。
”よしっ 食うゾー”
とオレが気合をいれていると
意外にも負けたはずのヤツがでかい声でオレに喚いた。
「 オイ ウマソーだなっ 」
ヤツは敗北からあっという間に立ち直り、全身をチョーセンヤキニクに合わせた
リセットを完了していたのだ。
オレの中で驚きとともに警戒心が蘇ってきた。
” このオトコは手ごわい、これからも油断はできないだろうーーー ”
ー サンパウロの食はサイコーだ、 チョーセンヤキニクもザクースカもいい --
ホテルにチェックインし、シャワーを浴びた。
冷蔵庫からビールを取り出し一気に飲んだ。
空き缶を灰皿に椅子に座ってタバコを吸っていると、ヤツから確認の
電話が入った。
「 予定通り着いたな、飛行機が遅れると思っていたがー」
「 あぁ 珍しくまともに飛んだ 」
「 8時に迎えいく、ロビーで待っていてくれ 」
「 OK 」
ヤツとの ”食イモノをめぐる戦い” はすでに始まっている
とオレは考えていた。
ヤツは今はまだ事務所だ。
だから忙しい。
今晩食う食イモノについてまだ考える余裕はない。
ヤツがそれを考えだすのはピックアップのためのクルマに
乗ってからだ。
オレは今考えることができる。
全身がターゲットを絞ったその”食いモノに”に調整される、
胃も腸も肝臓も腎臓もそして脳も。
” カンケーないのは心臓くらいのものだ ”
さてオレは今日何を食うべきなのか決めなくてはないらない。、
タバコをもう一本取り出し、フーッと強く煙を吐き出した。
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オレはヤツと約束した時間のキッカリ5分前に部屋をでてロビーに降りた。
隣のバーからスーツ姿の男女がバカ笑いをしているのが聞こえる。
” さすがサンパウロだな ”
とオレは思った。
仕事の帰りにスーツ姿でバーでダチと酒を飲む。
それから帰宅する。
オレの住んでいるゴイアニアではそうはいかい。
オトコドモは仕事が終わると一目散に家に帰る。
仕事帰りにバーに寄るなど考えられない。
外で酒を飲むときは、女房づれか、愛人づれでカップルばかりだ。
一度家に帰ってからまた出かけるからこうなるのだ。
” ダサイな、ゴイアニアは ”
とオレは思った。
かなりダサイ。
鬱陶しいオンナと出かけなければ酒も飲めない。
その点 サンパウロはトーキョーと変わらず
ダチはモチロン、それほど親しくもないオンナとでも、飲む機会
はいくらでもある。
家に帰るのはその後だ。
” 都市文化はやはりサンパウロとリオだけかー ”
そんなことを考えながら入口のドア越しに外を見ていると
ヤツの車が入ってきた。
その瞬間オレの全身に ”食いモノアドレナリン” が横溢するのを
ハッキリと意識した。
そしてヤツがドアマンにキーを預けると同時にオレはドアに向かった。
ヤツが回転ドアに入るほんの一瞬前にそこに滑り込んだ。
ガラスの中のオレをヤツは素早く見つけ、ドアに手をかけるのをやめてオレを外で待っている。
「 待ったか? 」
「 そうでもない 」
ヤツはクルマに左から乗り込み、オレは助手席に座った。
無言のままヤツはエンジンをかけ、光り輝くこの南米一の大都市に
クルマを溶け込ませていく。
最初の信号でヤツがやっと口を開いた。
オレは緊張した。
「 ところで今日は 何が食いたい?」
出た! この ”問い” をオレは一か月間待っていた。
”この瞬間のためにオレの今までの人生はあったのではないか! ”
と錯覚をおこしたくらいだ。
横をみると、ヤツは薄笑いを浮かべている。
ヤツの頭の中には
”今日の食いモノの具体的なイメージ”
がいつものように完全に固定されいてるに違いない。
オレはイキナリ答えた。
「 チョーセンヤキニクだ 」
「 エッ 」
「 チョーセンヤキニクッ 」
「 ------ 」
「 うまいロシア料理の店を見つけたんだがーー」
ヤツの声にチカラがない
オレは黙っている。
絶対に余計なことはしゃべってはないらないー
「 ザクースカが最高らしい、 キャビアに黒パンもうまいに決まっている 」
「 ----- 」
オレはやっとヤツに答えてやった、
「 オレは塩で行く、オマエはタレか ?」
ヤツの食いモノオーラがみるみる落ちていくのが
横に静かに座っているオレにはよくわかった。
ヤツは場の主導権を押さえられなかったのだ。
それはオレが押さえていたのだ。
気がつくとクルマはアクリマソンというオリエンタルが多く住む
セクターに向かっている。
” 勝った ”
” オレはヤツとの食いモノの戦いに勝ったのだ ”
しかしオレはヤツが少し可哀そうに思えてきた。、
なぜならヤツの全身は胃を中心にして ”ザクースカ ”に向けて完璧に調整され
ていたのに違いないからだ。
それがオレに予想外に食の主導権を取られ、ヤツの全身は拠り所を失い、いまは
ぶっ壊れたPCのようにカオス化しているのに違いない。
やがてクルマがチョーセンヤキニク屋らしき店の前で停止した。
赤と黒と白のインテリアがガラス越しに見える。
”さすが いい店を知っているな ”
とオレは素直に思った。
店内にはいると韓国人らしいオヤジが妙に媚びた雰囲気で
テーブルにオレとダチを案内する。
無煙ロースターの煙突が銀色に輝いている。
”よしっ 食うゾー”
とオレが気合をいれていると
意外にも負けたはずのヤツがでかい声でオレに喚いた。
「 オイ ウマソーだなっ 」
ヤツは敗北からあっという間に立ち直り、全身をチョーセンヤキニクに合わせた
リセットを完了していたのだ。
オレの中で驚きとともに警戒心が蘇ってきた。
” このオトコは手ごわい、これからも油断はできないだろうーーー ”
ー サンパウロの食はサイコーだ、 チョーセンヤキニクもザクースカもいい --
by theamazontouch
| 2008-12-14 13:49
| タフでなければ生きていけない