2008年 12月 11日
またMからオレの事務所に電話があった。
「夜、モデル撮影にいかない?」
まぁ遊びの誘いだ。
なんでもMのスタジオにファッションショーの招待状が来たという。
Mはまだほんの駆け出しのカメラマンなのにどこでどうコネをつけたのか
ファッションショーとそのあとのパーティーの招待状を入手したらしい。
遊びで好きなだけ撮ればいいという。
「 ”カメラもレンズも沢山あるのに宝の持ち腐れだッ” て言ってたじゃないー
行きましょう 」
と強引だった。
「 でもこの間ヌード撮ったばかりだしなぁ 」
とオレが逡巡していると
「 ゴイアニアのファッションモデルよ、本物のモデル、それに客も美女だらけ、
パーティーもクール、行くしかない!」
と決めの文句を吐いた。
ゴイアニアは美女の産地で有名だ。
ファッションモデルとなると相当だろう。
「 OK 」
オレは久々にジャケットを引っかけ、すでに化石になりかけた
70-200MMを携えてショー会場に乗り込んだ。
Mはすでに来ていて、シャンパングラスを手にしながらオレを
見つけ手招きしている。
パーティーはMから聞いていたとおりなかなか ”クール” で 一瞥すると
会場には美女が充満しているように見えた。
ショーが始まるまでまだ時間がかかりそうなので、スシなどつまみながら
Mと馬鹿話をしていると、ショーがあと15分ほどで始まるとアナウンスがあった。
カメラにレンズを装着し、ファインダー越しに会場を眺めていると
オレをこのパーティーの雇われカメラマンだと勘違いしたオンナドモが
シャンパングラスを片手に次々とやってくる。
「アタシの写真撮ってくれない」
オレにはこのオンナドモを撮影する義務はまったくないが
イチイチ説明するのもめんどくさい。
とりあえずカメラを構えて撮ってやった。
レンズは中望遠なので近くにいるオンナドモはマトモには写らない。
しかしシャッターを押すと満足したようすで去っていく。
ショーが始まった。
オレはファッションショーの撮影は初めてで
はたして動くオンナが撮れるかどうか自信がなかった。
オレは新しいカメラを買った時にウレシクテ一度だけ "動くオンナ" を
撮ったことがある。
当時まだオレの事務所で秘書をしていたMに頼み込んで
Mのダチにタダでモデルになってもらったのだ。
笑顔のいいキレイなオンナで撮影自体は面白かったのだが
”動くオンナ” をオレはうまく撮れなかった。
さてショーだ。
雑誌で見たとおりの雰囲気で長身のモデルが ”花道” を次々に
歩いてきて正面にカメラを構えているオレの前に迫ってくる。
ファインダーからのぞくとものすごいスピードだ。
ピントが合わなかったり、フレームからはみ出たりして
まるで撮れていないのがわかる。
「クソッ」
カメラの小さなモニターで確認してみると
最初のモデル群の写真はまるでダメ。
モデルの顔もスタイルも身にまとっていた服も全然覚えていない。
はじめてのことで焦っていたのに違いない。
「どう?」とM
「全然ダメだ」
「むずかしいの、モデル撮影は、特に動いているときはネ」
「ーーー 」
”クソッ、Mめッ、ついこの間までオレにコーヒーなど入れていたクセにー”
やがて二人目のデザイナーのショーが始まった。
オレはもううまく撮るのをアキラメテいた。
そのかわりせっかく 美女 を撮りに来たのだから、
”ファインダーを越しにでもオンナをよーーく見てやるー”
と決めていた。
ファインダーを覗いているオレにモデルがズンズン
迫ってきてあっという間に全身は消え、上半身になり、そして
顔になる。
何人ものモデルが迫ってきて、遠ざかったはずだが
オレには一瞬のに思えた。
気がつくと、デザイナーが
モデルの真ん中で挨拶している。
クタクタになったオレが覚えていたモデルはファインダーのなかで
一瞬
”ハクイな このオンナはー”
と思ったロイラ(金髪)の一人だけ。
あとは何を着ていたのかはオロカ、顔もスタイルも全く頭の中から
消えている。
「どう?」
とまたM
「うまくイカン」
「 わかったでしょ、アタシが結婚式やイベントでどのくらい大変だかー 」
「 --- 」
「 アマゾンの撮影だけが大変じゃないのよ 」
ウルセー、オレはただ勝手にとっているだけでカメラマンじゃネェー
と思ったがその時は柄にもなく素直に答えた。
「 そうだな 、そのとおりだ 」
いつのまにか ”花道” にはデザイナー全員とモデルが勢ぞろいしていた。
オレはやる気もなく惰性で何枚がバシャバシャと撮った。
疲れ切ったオレは花道から離れソファでビールをがぶ飲みしていた。
ノドがカラカラだったのだ。
そこでぼんやりしていると、突然長身のオンナが声をかけてきた。
「アナタ、さっき写真とっていたでしょ、それくれない?」
そのオンナはステージをカッカッと歩いていたモデルの一人だった。
華やかなファッションに身を包んだ自分の写真がほしいのだ。
モデルと言っても田舎だからそれほどショーの機会はないのかもしれない。
「 OKだ,Mのスタジオまでとりに来い 」
Mをモデルに紹介しオレは帰途についた。
ひんやりした街を歩きながら、いまオレの人生に起きているに違いない
急激な変化に思いを巡らしていた。
ついこの間までオレのブラジル人生は
”オトコしかいない、オトコしかカンケーない”
世界だった。
ダチも客も従業員もなにもかも、99%オトコだった。
それがオレが仕事をナカマに丸投げし、オレの世界に関係していた例外のオンナ、
秘書Mが独立したとたんに、オレを取り巻く世界が急激に変わった。
セクシーな、キレイな、オンナがやたらに身の回りに現れるようになったのだ。
それは明白な事実だった。
人生の ”コンセプト” が危機に瀕しているのをオレは明確に感じた。
”このままだと
ー タフでなければ生きていけない ー
が
ー タフでなくても生きていけるんだからぁー
になる危険率が上昇している ”
” よしオレはパンタナルへ行く、パンタナルにいくんだ ”
アマゾンではない。
とにかく パンタナルに行くのだ。
そこでは少なくともオトコのダチが待っているーーー
ー ブラジルオンナはイイ、でも近づくとタフでなくなる -
(Photo by Felix)
「夜、モデル撮影にいかない?」
まぁ遊びの誘いだ。
なんでもMのスタジオにファッションショーの招待状が来たという。
Mはまだほんの駆け出しのカメラマンなのにどこでどうコネをつけたのか
ファッションショーとそのあとのパーティーの招待状を入手したらしい。
遊びで好きなだけ撮ればいいという。
「 ”カメラもレンズも沢山あるのに宝の持ち腐れだッ” て言ってたじゃないー
行きましょう 」
と強引だった。
「 でもこの間ヌード撮ったばかりだしなぁ 」
とオレが逡巡していると
「 ゴイアニアのファッションモデルよ、本物のモデル、それに客も美女だらけ、
パーティーもクール、行くしかない!」
と決めの文句を吐いた。
ゴイアニアは美女の産地で有名だ。
ファッションモデルとなると相当だろう。
「 OK 」
オレは久々にジャケットを引っかけ、すでに化石になりかけた
70-200MMを携えてショー会場に乗り込んだ。
Mはすでに来ていて、シャンパングラスを手にしながらオレを
見つけ手招きしている。
パーティーはMから聞いていたとおりなかなか ”クール” で 一瞥すると
会場には美女が充満しているように見えた。
ショーが始まるまでまだ時間がかかりそうなので、スシなどつまみながら
Mと馬鹿話をしていると、ショーがあと15分ほどで始まるとアナウンスがあった。
カメラにレンズを装着し、ファインダー越しに会場を眺めていると
オレをこのパーティーの雇われカメラマンだと勘違いしたオンナドモが
シャンパングラスを片手に次々とやってくる。
「アタシの写真撮ってくれない」
オレにはこのオンナドモを撮影する義務はまったくないが
イチイチ説明するのもめんどくさい。
とりあえずカメラを構えて撮ってやった。
レンズは中望遠なので近くにいるオンナドモはマトモには写らない。
しかしシャッターを押すと満足したようすで去っていく。
ショーが始まった。
オレはファッションショーの撮影は初めてで
はたして動くオンナが撮れるかどうか自信がなかった。
オレは新しいカメラを買った時にウレシクテ一度だけ "動くオンナ" を
撮ったことがある。
当時まだオレの事務所で秘書をしていたMに頼み込んで
Mのダチにタダでモデルになってもらったのだ。
笑顔のいいキレイなオンナで撮影自体は面白かったのだが
”動くオンナ” をオレはうまく撮れなかった。
さてショーだ。
雑誌で見たとおりの雰囲気で長身のモデルが ”花道” を次々に
歩いてきて正面にカメラを構えているオレの前に迫ってくる。
ファインダーからのぞくとものすごいスピードだ。
ピントが合わなかったり、フレームからはみ出たりして
まるで撮れていないのがわかる。
「クソッ」
カメラの小さなモニターで確認してみると
最初のモデル群の写真はまるでダメ。
モデルの顔もスタイルも身にまとっていた服も全然覚えていない。
はじめてのことで焦っていたのに違いない。
「どう?」とM
「全然ダメだ」
「むずかしいの、モデル撮影は、特に動いているときはネ」
「ーーー 」
”クソッ、Mめッ、ついこの間までオレにコーヒーなど入れていたクセにー”
やがて二人目のデザイナーのショーが始まった。
オレはもううまく撮るのをアキラメテいた。
そのかわりせっかく 美女 を撮りに来たのだから、
”ファインダーを越しにでもオンナをよーーく見てやるー”
と決めていた。
ファインダーを覗いているオレにモデルがズンズン
迫ってきてあっという間に全身は消え、上半身になり、そして
顔になる。
何人ものモデルが迫ってきて、遠ざかったはずだが
オレには一瞬のに思えた。
気がつくと、デザイナーが
モデルの真ん中で挨拶している。
クタクタになったオレが覚えていたモデルはファインダーのなかで
一瞬
”ハクイな このオンナはー”
と思ったロイラ(金髪)の一人だけ。
あとは何を着ていたのかはオロカ、顔もスタイルも全く頭の中から
消えている。
「どう?」
とまたM
「うまくイカン」
「 わかったでしょ、アタシが結婚式やイベントでどのくらい大変だかー 」
「 --- 」
「 アマゾンの撮影だけが大変じゃないのよ 」
ウルセー、オレはただ勝手にとっているだけでカメラマンじゃネェー
と思ったがその時は柄にもなく素直に答えた。
「 そうだな 、そのとおりだ 」
いつのまにか ”花道” にはデザイナー全員とモデルが勢ぞろいしていた。
オレはやる気もなく惰性で何枚がバシャバシャと撮った。
疲れ切ったオレは花道から離れソファでビールをがぶ飲みしていた。
ノドがカラカラだったのだ。
そこでぼんやりしていると、突然長身のオンナが声をかけてきた。
「アナタ、さっき写真とっていたでしょ、それくれない?」
そのオンナはステージをカッカッと歩いていたモデルの一人だった。
華やかなファッションに身を包んだ自分の写真がほしいのだ。
モデルと言っても田舎だからそれほどショーの機会はないのかもしれない。
「 OKだ,Mのスタジオまでとりに来い 」
Mをモデルに紹介しオレは帰途についた。
ひんやりした街を歩きながら、いまオレの人生に起きているに違いない
急激な変化に思いを巡らしていた。
ついこの間までオレのブラジル人生は
”オトコしかいない、オトコしかカンケーない”
世界だった。
ダチも客も従業員もなにもかも、99%オトコだった。
それがオレが仕事をナカマに丸投げし、オレの世界に関係していた例外のオンナ、
秘書Mが独立したとたんに、オレを取り巻く世界が急激に変わった。
セクシーな、キレイな、オンナがやたらに身の回りに現れるようになったのだ。
それは明白な事実だった。
人生の ”コンセプト” が危機に瀕しているのをオレは明確に感じた。
”このままだと
ー タフでなければ生きていけない ー
が
ー タフでなくても生きていけるんだからぁー
になる危険率が上昇している ”
” よしオレはパンタナルへ行く、パンタナルにいくんだ ”
アマゾンではない。
とにかく パンタナルに行くのだ。
そこでは少なくともオトコのダチが待っているーーー
ー ブラジルオンナはイイ、でも近づくとタフでなくなる -
(Photo by Felix)
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by theamazontouch
| 2008-12-11 16:24
| タフでなければ生きていけない